脱力日記

脱力おばさんの思い出話やつまらない日常を綴るブログ

夢とボケ~罪悪感の正体を探る~

ボケた帰還兵たちの奇行

ある人のブログで、かなりすさまじい話を読んだ。
戦争中に、中国に派遣されて、帰還した兵士が、普通のお父さんとして、無事に務めを終え、80や90になって、すっかりボケて、老人ホームに入る。
すると、いきなり廊下を走り出したり、土下座をして謝っている人が、よくいる、というのだ。
ボケているのだから、自分では、何をしているのかは、わかっていないのだろう。
お医者さんによれば、それはやっぱり、むこうで、あまりにもひどいことをやってきており、その罪悪感が、ボケてから、出てくるみたいだ、と。
へえ、と思った。
そうか、「捕まえられる」と思って、走って逃げてみるとか、または、謝って、許してもらおうとする、と。
しゃんとしている間は、隠し通して、いいお父さんで終わっていても、ボケたら、隠せない、と。
すごい話である。

私の悪夢

私は、この話が、「夢」とも関係があるのではないか、という気がする。
「ボケてからの自分」と同じように、夢の内容も、操れない。
それは、自分がよく見る夢のパターンと比較してみると、「中国でひどいことをした帰還兵がボケたあと」と、同じような感じが、しなくもなくて、それは、「罪悪感とは、何か」ということを理解するためにも、関係があるのではないか、という気がしてきた。
ボケたら出るとか、夢に出るとかいう、「罪悪感というものの本質」とは、いったい、なんなのか。

「罪悪感の正体」は、「焦り」の感情では?

日本人には、罪の意識がないと、よく言われるが、「罪悪感」とは、私が思うには、「こんな状態では、あとで、きっと、大変なことになるに違いない」という「焦り」である。
焦り。
罪悪感というのは、全能の神を信じる人の場合には、神の罰との関係になるのだろうが、そうでない場合には、たぶん
「自らが引き起こした、なんらかの好ましからざる状態について、この先に予想される深刻な展開を予期した焦り」
ではないのか。
そう思うのは、「自分の悪夢」のパターンの分析から、である。

遅刻

寝過ごして、仕事や学校に遅刻する夢。
これは、今でもしょっちゅう見る。
が、実際には、そういうことは、たまにはあったけれども、1年に1回とか2回であろう。
それが、繰り返し、夢に出る。

昼休み

昼休みに、なかなか、食事処が見つからない。
または、注文をしても、出て来なくて、時間に間に合いそうもない。
または、店にいる間に、1時を過ぎてしまったとか。
こういう夢を、かなりしょっちゅう見るのである。
実際には、1時までに戻れなかったということは、あったとしても、1~2回だったのではないか、と思う。

ペット

小鳥の世話が、ちゃんとできなくて、病気になっているとか、飢えさせているという夢を、しょっちゅう見る。
そういうことは、現実には、多少はあったが、こんなに繰り返し夢に見るというほどのはずは、ない。
何十年も見続けている、定番の悪夢。

アパート

アパートを移ったら、長い間、前のアパートの解約を忘れていて、家賃を二重に払わねばならないということに気がついて、焦っている夢。
現実には、そんなことは、一度もなかったのに、なぜか、何度も見る夢。

帳簿

仕事でつけていた帳簿に、重大な間違いがあって、それを直さないまま、転勤してしまい、長いこと経った後で、発覚し、大変なことになっている夢。
実際には、あとで呼ばれて直したということは、一度あったが、一度しかないのに、何度も夢に見る。
ひどいときには、呼ばれて直したはずなのに、夢の中では、ちゃんと直ってなかったことになっていたりする。

払い込み

仕事の払い込みのお金を、期日までに払っていなくて、忘れたまま、何日も経っていることに気がついて、焦っている夢。
現実では、一度もなかったのに。

ビデオ

昔はよく、レンタルビデオを借りていたものだが、たまに、返却を忘れて、超過料金を取られることがあった。
夢の中では、それが、ものすごい長期間で、高額ということになっていて、焦りまくっている。

時間割

学校に行くが、時間割どおりの教科書を揃えて来なかったことに気がついて、焦っている。
さらに、時間割の表を探そうとしても、見つからない。
これも、もう何十年も見続けている、定番の悪夢。

現実でカタをつけても…

どれを見ても、「現実では、とっくにカタがついている話」なのである。
そのままにして、放ってあるものなどは、ひとつもない。
ところが、なぜだか、夢には出てきてしまうのである。
それも、夢だと、「深刻度」が、倍増されて出てくる。
どうしてなのか、本当に、わからない。
これはたぶん、「そのときの焦り」が、記憶の中に深く刻み込まれているから、ではないのか。
「焦っていた」という感覚だけは、カタがついてからも、消えずに、残るのではないのか。

オールタイムが悪夢?

そうなると、冒頭で述べた「帰還兵」の状態というのは、こういうふうに解釈できる。
現実では、彼らは、BC級戦犯にはならず、罪を逃れたが、「あとでとんでもない罰を受けるかもしれない」という「焦り」の気持ちだけは、消えずに、ずっと残った。
いつか、戦犯として訴えられ、自分の家の扉が叩かれて、連れて行かれる日が来るかもしれない、というふうに、戦後の数年くらいは、たぶん、ずっと、怯えていた。
隠し通したまま、定年まで無事に務めあげて、罪に問われる可能性が、ほぼ、なくなっても、「焦り」の気持ちだけは、残った。
そして、ボケた。
ボケたら、あとは、自分の意思は、働かない。
夢の世界。
私の場合には、時間に間に合わないとか、帳簿を間違えたとか、教科書がないとか、その程度の「焦り」で済んだから、悪夢を繰り返し見るとは言っても、まだ、なんとか生きていける。
永遠に寝ているわけではないし、起きている間は、悪夢に悩まされるということはないから。
が、将来、ボケてしまったら、「夢から覚めている時間」は、ないわけだから、これがずーっと続くのか、と思うと、かなりげんなりする。
定番の悪夢が、とっかえひっかえ、エンドレスで上映されるのかと思うと、あまりにもつらいから、できれば、ボケたくはない。
そして、そう考えれば、「中国からの帰還兵」とか、そういう人にとっては、「ボケたあとの世界」というのは、オールタイムが夢なわけだから、文字通り、地獄のようなものなのかもしれないな、と、思うのだった。