脱力日記

脱力おばさんの思い出話やつまらない日常を綴るブログ

カイワレ先生の思い出

倫理の講師は、高校生が大嫌い

高校の時に、倫理を教えに来ていた講師の先生がいた。
その先生は、倫理の時間しか来なくて、普段は学校にいなくて、要するにパートだった。
ほかにも、社会科の先生はいたので、高校生向けの倫理くらいは、教えられないことはなかったと思うのだが、どうして、倫理に外部講師を呼ぶことになったんだか、よくわからない。
だが、そういうことになったということは、やっぱり、先生たちのやりくりがつかなかったということなのだろう。

いつもピリピリ

その先生は、確か20代後半くらいで、背が低くて、坊主頭で、メガネをかけていた。
洒落っ気は、ゼロ。
作務衣みたいなものを着て、お寺で箒がけをしていたとしても、まったく違和感がなさそうな、そんな雰囲気であった。
何がびっくりしたって、先生が、最初の授業のときに、「カマした」ことである。
先生は、「私をナメたら承知しないぞ」「本当は、高校生なんか相手にしたくないんだ」「私を怒らせるなよ」「騒いだら、出て行ってもらう」と言って、ものすごい勢いで、生徒を脅したのである。
…が、前にも言ったように、その当時は、基本的にはスパルタ教育時代だったから、私たちは、そんなに驚いたというわけではなかったが、やっぱり、その先生は、特殊な感じではあった。
先生は、いつもピリピリしていて、高校生に倫理を教えに来るのは、心の底から嫌なんだという様子であった。
だったら、断ればよかったのに、まあ、いろいろ、事情があったのであろう。

先生の唯一の楽しみ

その先生に、何を教わったのかということは、ぜんぜん覚えていない。
「孔子が…」「孟子が…」「プラトンが…」みたいなことを言っていたのだが、「…」のあとに、どういう話をしていたのかは、さっぱり覚えていない。
先生の話の中で、覚えていることは、たったひとつ。
いかにも女に相手にされていなさそうな先生の、ただひとつの楽しみは、カイワレを育てて、それを収穫して、自分で食べること、だったのである。
先生は、カイワレをどうやって育てているかとか、それを豆腐などに乗っけて食べることが、どんなに嬉しいかを、とくとくと語った。
そして、自分で育てたカイワレと、市販のカイワレは、ぜんぜん味が違うのだ、と言った。
それだけは、よく覚えている。
嫌々続けている高校でのパートで、大嫌いな高校生を相手に、どうしてそういう話をしたんだか、わからないが、たぶん、先生には、ほかに、ヒマネタのキャパがなかったのではないだろうかと、思われる。
あの先生は、その後、いったいどういう人生を送ったんだか、わからないが、カイワレ栽培だけは、今でも続けているのではないかという、気がするのであった。