脱力日記

脱力おばさんの思い出話やつまらない日常を綴るブログ

八つ墓村から逃げ出したK先生を襲った恐怖

八つ墓村から逃げ出した先生

高校の時の国語の先生は、とても珍しい名前だった。
が、故郷に帰れば、そういう名前の家ばかりなのだという。
鹿児島の田舎から出てきたということだったが、K先生は、故郷の田舎が、嫌で嫌で仕方がなかったから、逃げ出したのだと言った。
見た目は、俳優のビンセント・ドノフリオみたいな感じ、だったと思う。
が、実際には、順番は逆であって、ドノフリオを見たときに、「あっ、なんとなくK先生風味かも」と思ったというのが、正しい。

とにかく、どうしてそんなに、故郷で暮らすことが嫌だったのかというと、それは、日本の田舎に特有の、じめじめしたうっとうしい雰囲気、それが耐えられなかったのだという。
そして先生は、あくまでも具体的に、「どういうふうにうっとうしいのか」ということを、教えてくれるのだった。
例えば、先生が、たまの帰郷をする。
着いたのが、夜になってからで、実家に辿りつくまでに、村人には、誰一人会っていない、と。
しかし、次の朝になると、なぜか、村の全員が、「○○のバカ息子が帰ってきた」ということを、知っているのだという。
……。
誰にも会っていないのに、どうして知っているのかって、それは、八つ墓村みたいな、因習に満ちた、息苦しい日本の農村だから、ということらしい。
先生は、田舎から逃げ出して、都会で暮らすようになって、心の底から、せいせいしたのだという。
隣に住んでいる人が、どんな人なのか、よく知らないとか、道ですれ違う人が、見知らぬ他人であるということが、先生にとっては、奇跡のように、幸せに感じられるのだという。

愛する人に殺意が芽生えるとき

そんな幸せなK先生は、幸せな結婚も、していたのだが、一度だけ、奥さんを死ぬほど憎んだことがあるという。
それは、先生が、まだ30代の若さで、脳梗塞を起こしてしまったときだという。
先生と奥さんは、隣に寝ていたのだが、先生は、寝ているときに、夜中に脳梗塞を起こし、気がついたときには、動くことも、しゃべることもできなかったのだそうである。
当然、「死ぬ」と思ったらしい。
焦った先生は、なんとかして、助かろうとして、奥さんに気がついてもらおうとした。
しかし、奥さんは、何も気づかず、すやすやと、幸せそうに、眠っていたのだという。
その寝顔を見て、先生は、殺意を感じるほどに、奥さんを憎たらしく思ったのだそうである。
先生は、奥さんを愛しているが、あのときには、殺してやりたいと思ったと。
その後、やっとのことで奥さんが気がついてくれて、病院へ運ばれ、助かった先生は、リハビリなどもしつつ、めでたく、職場復帰も果たしたわけである。
しかしまあ、考えてみると、ものすごい恐怖体験である。
ああいう話は、高校生が相手だから、平気でできたのかもしれないな。
「自分も、なるかも」と思っていたら、あまり、聞きたい話ではない。